技能実習制度に代わり、2027年4月1日から本格スタートする「育成就労制度」。人材育成だけでなく「人材確保」を明確な目的とし、条件付きでの「転籍(転職)」を認めるなど、外国人労働者の人権保護へ大きく舵を切りました。
一見すると外国人材にとってメリットばかりに見える新制度ですが、実はいくつかの大きな課題が指摘されています。
1.「地方から大都市圏」への人材流出リスク
最も懸念されているのが、転籍の容認に伴う「地方の人手不足の加速」です。
これまでは原則として数年間同じ企業で働く必要がありましたが、新制度では1から2年働けば(一定の日本語・技能要件を満たすことで)本人の意思による転職が可能になります。その結果、賃金が高く生活の利便性が良い東京や大阪などの大都市圏へ、地方の優秀な人材が流出してしまうのではないかと心配されています。
2.受け入れ企業(特に中小企業)のコスト急増
新制度では、これまで外国人労働者本人が一部負担していた「現地送り出し機関への手数料」や「入国時の渡航費用」の多くを、企業が負担する仕組みへと厳格化されます。
さらに、就労開始までに「日本語A1相当(挨拶レベル)」以上の教育や、就労中のステップアップ研修が義務化、または強く推奨されるため、外国人1人あたり年間50万から100万円のコスト増加が想定されており、経営体力の弱い中小企業には死活問題となっています。
3.「他国との獲得競争」には根本的な解決にならない
新制度によって日本の手続きや権利保護が改善されても、「他国の方が圧倒的に稼げる」という経済的現実は変わりません。韓国の積極的な受け入れ枠拡大や、欧米の永住権直結型ビザに比べると、日本の新制度は「まだ選ばれるためのインパクトに欠ける」という厳しい専門家の意見もあります。
「選ばれる企業」へ。先をいく日本企業が始めている待遇改善の具体例
「制度が変わるから」「円安だから」と諦めるのではなく、優秀な外国人労働者を確保し、他社や他国に負けないために独自の待遇改善を進める日本企業(特に地方や中小企業)が増えています。
その最前線の取り組みの例を一部ご紹介します。
【企業が進める待遇改善・定着施策の具体例】
・評価とキャリアの改善
日本人と完全に同一の賃金体系や評価シートを導入。さらに「特定技能」への移行やリーダー昇格時の「明確な昇給制度」を設定することで、「頑張れば稼げる、ステップアップできる」というモチベーションに繋がり、転籍(離職)を防ぎます。
・教育の支援
勤務時間内での日本語学習時間を保証したり、オンライン日本語教材や動画マニュアルの費用を全額会社負担にします。これにより業務のミスや安全リスクが激減し、「自分を育ててくれる会社」として愛着が高まります。
・生活と環境の支援
社宅(家賃・水道光熱費)の会社一部補助や、多言語に対応したメンター(相談役)社員の配置を行います。また、ハラールフードへの配慮や礼拝スペースの設置をすることで、日本での生活不安を解消し、孤独感からくる失踪やメンタル不調による離職を未然に防ぎます。
(ハラールフード:イスラム教の戒律で食べることを許されている食品や料理)
・公的支援の活用
「人材確保等支援助成金」や「業務改善助成金」を活用した職場環境のデジタル化(マニュアルのDXなど)を進めることで、企業の持ち出しコストを抑えながら、外国人労働者の生産性と基本給を同時に引き上げます。
「コスト」から「投資」への意識改革
これからの時代、外国人を「都合の良い安い労働力」とみなす企業からは、新制度の転籍ルールによって瞬く間に人材が消えていくことになります。
いち早く待遇を改善し、彼らを「自社の成長を支える大切な仲間(投資対象)」として受け入れる体制を整えた企業だけが、これからの厳しい競争時代を生き残ることができます。
日本はこの意味では先進国と言えるのだろうか。日本社会が長年抱えてきた複雑な組織上の原因や事情が「政治のだらしなさ(現場に足を運んで実態を見ているとは思えない)」と絡み合って今があるようにおもえてならない。
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この記事の監修者 行政書士 髙橋 一夫
2026-9-3
