外国人雇用:なぜ「技能実習3号」は影が薄い?一時帰国を挟む「本音と建前」

いきぬき

日本の深刻な人手不足を支える外国人労働者。その受け入れ制度を調べていると、ふとした疑問にぶつかる。

「特定技能があるのに、なぜ『技能実習3号』なんて仕組みがあるのか」
「2号から3号へ進むとき、なぜわざわざ1ヶ月も『一時帰国』させなきゃいけないのか」

実は、これらの複雑な仕組みの背景には、日本の法律が抱える「建前と本音」、そして制度が変わってきた「歴史の前後関係」が深く関係していました。知っているようで知らない外国人雇用の舞台裏。筆者自身、書士会の講習会後の親睦会、その雑談の中で腑に落ちたことを、をスッキリ説明します。

■なぜ「3号」が存在するのか?それはすべて歴史の順番だった

結論から言うと、「技能実習3号(2017年誕生)」は、「特定技能(2019年誕生)」よりも先に作られた、からです。

  • 1993年〜: 技能実習制度がスタート(最長3年まで)。
  • 2017年: 人手不足の企業から「3年で帰すのはもったいない」という声に、期間を5年に延ばすために「技能実習3号」が新設された。
  • 2019年: 「国際貢献」という建前を抜きにして、正面から労働力を確保するための新制度「特定技能」が誕生。

つまり、特定技能ができる前は、日本に5年間残るための唯一のルートが「3号」だったのです。
しかし、あとからできた特定技能のほうが「技能実習2号から試験免除で移行」「試験突破」など、企業の手続きがスムーズでメリットが多いため、結果として3号の影が薄くなってしまいました。

■なぜ「一時帰国」させるのか?:建前と本音

技能実習2号(3年目)を終えて3号(4年目)に進む際、実習生は「1ヶ月以上の一時帰国」が法律で義務付けられています。これには大きな「建前」と「本音」があります。

建前:母国の発展と家族との親睦

技能実習の本来の目的は「日本で学んだ技術を母国に持ち帰ること(国際貢献)」です。そのため、「一度母国に帰って技術移転の準備をしましょう」「家族と離れて頑張ったから親睦を深めましょう」というのが国側の表向きの理由です。

本音:出入国管理上の「リセット」

しかし、政府側の本当の狙いは「地続きの長期滞在をさせないためのリセット措置」です。
日本には、途切れなく滞在し続けると将来的に永住権の申請要件に近づきやすくなるという法的なハードルがあります(実習や特定技能1号の期間自体は永住のカウント対象外ですが、一度も出国せず10年滞在されると別ルートで永住に繋がるリスクが増します)。
一度完全に日本を出国させることで、「これは定住(移民)ではなく、あくまで区切られた研修の延長である」という外見上の実績を作りたい、というのが出入国在留管理庁側の本音です。また、国際社会から「一歩も出国させずに5年間働かせるのは強制労働だ」と批判されるのを防ぐための役割もありました。

■それでも一部の企業が「あえて3号」を選ぶ理由

実務上は「2号 ➔ 特定技能」へ直接移行するルートが主流ですが、現在でもあえて「3号」を選ぶ企業が一部に存在します。そこには企業側の切実な事情があります。

 ①特定技能は外国人労働者に「転職の自由」が認められています。そのため、地方の企業や人手不足の職種では、特定技能に移行した途端に都会の他社へ引き抜かれるリスクがあります。一方、3号は原則「転職不可」のため、企業は確実にあと2年間自社で働いてもらえる安心感があります。
 ②国から「優良企業」として認められて3号を受け入れると、企業が同時に雇用できる実習生の人数枠が通常の「2倍」に拡大されます。人手を多く確保したい大企業や農業などでは、この枠拡大が大きな魅力となっています。

これからはどうなる?

歴史の過渡期に生まれた「技能実習3号」と「一時帰国」のねじれですが、この仕組みも間もなく終わりを迎えます。

2027年4月を目途に、技能実習制度は廃止され、新制度「育成就労」へと移行します。新制度では、最初から特定技能への移行を前提とした一つのキャリアパスに整理されるため、3号という区分や、義務としての一時帰国はなくなる予定です。

外国人雇用のルールは時代に合わせて激変しています。「建前と本音」を正しく理解しておくことが、これからの時代に選ばれる企業になるための第一歩と言えるだろう。

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この記事の監修者 行政書士 髙橋 一夫
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2026-10-25

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