【外部監査人が提言】育成就労時代に生き残るための「3つの処方箋」(連載第3回)

在留資格

こんにちは。行政書士の髙橋です。
育成就労制度への移行を控えた今、監理団体様や受入企業様にお伝えしたい超重要ポイントを解説する全3回連載の最終回です。

  • 第1回:外国人候補者の「生身の本音(お金・人間・住まい)」を知る
  • 第2回:3月末「駆け込み申請」は危険。なぜ実務上のデッドラインは1〜2月なのか?

これら過去2回の記事では、法律の字面だけでは見えない「外国人の心理」と「実務スケジュールの厳しさ」という現実に重きを置いたことをお伝えしてきました。
「じゃあ、私たちは今から具体的に何を準備すればいいのか」
今回は、外部監査人の視点から、この転換期を乗り越え、育成就労時代に生き残るために今すぐ始めるべき「3つの処方箋」を提言します。

処方箋①:求人票の「手取り額」を透明化する

第1回でもお話しした通り、海外の候補者たちが最も心配しているのは「日本に行ったら、求人票と違う額面の金額しか残らなかった」というような、正確でない認識を持たれないようにしなければなりません。
育成就労では、一定の条件を満たせば「本人の意思による転籍(転職)」が可能になります。つまり、お金の面で不信感を持たれたら、すぐに他社へ逃げられてしまうということです。要は正確な情報発信です。
今すぐやるべきことは、「控除の徹底的な見える化」、「しかもそれが適正であること」示すことです。

  • 基本給から引き落とされる税金、社会保険料、家賃、光熱費の「実費」を明確に計算する。
  • 実際に毎月いくら残るのか(手取り額)を、現地語や「やさしい日本語」のシミュレーションシートで事前に提示する

最初に正確な数字を正直に伝えてくれる監理団体や企業こそが、彼らにとって「一番信頼できるパートナー」として選ばれるようになります。

処方箋②:移行にかかる「コスト」を先回りで試算する

「育成就労が始まってから考えればいい」では、企業の経営、人員計画が破綻しかねません。現行の技能実習と比べ、育成就労では受入企業や監理団体が負担すべきコストの仕組みが変わる可能性があります。(日本語教育の支援費用や、育成就労負担金など)
また、せっかく育てた人材に転籍されないためには、定期的な昇給や処遇改善といった「長く働いてもらうための投資」も予算に組み込む必要があります。

  • 現在の技能実習生にかかっている費用を総点検する。(育成就労生との不公平感をなくすこと)
  • 育成就労に切り替わった場合、1人あたり年間いくらのコスト変動があるかを試算する

このコスト試算を今から監理団体と受入企業が共同で進めておくことで、来年春に「こんなはずではなかった」と頭を抱えるリスクをなくすことができます。

処方箋③:日本人スタッフの「受け入れマインド」を育てる

どんなに立派な書類を作り、綺麗な社宅を用意しても、現場の人間関係が冷え切っていれば外国人は定着しません。「言葉が通じないから」と放置されたり、感情的に怒鳴られたりすれば、彼らはスマホ一つで次の転職先を探し始めます。

受け入れの成否を握るのは、経営層ではなく「現場の日本人スタッフ」の対応力です。

  • 現場のリーダーや先輩社員に対し、新制度(転籍の自由化など)の本質を説明する。
  • 単なる「労働力」として使うのではなく、「共に成長する仲間」として接するよう意識を変える。
  • 社内でのコミュニケーションに、難しい専門用語を使わない「やさしい日本語」を取り入れる。

そうは言っても物事は単純には運ばないと思います。企業との相性というかカルチャーフィットの問題、「企業に定着できるか」はある。が、先ずはとにかく現場の日本人がやさしく丁寧に対応してくれる企業なら、外国人は「この企業にずっと残りたい、もっと貢献したい」と思ってくれるのではないでしょうか。

制度変更を「ピンチ」ではなく「チャンス」に変える

3回にわたり、育成就労移行に向けた現実的な課題をお伝えしてきました。
一見すると、手続きやルールの変更、転籍のリスクなど、監理団体や企業にとっては負担が増える「ピンチ」のように思えるかもしれません。
しかし、そう考えるのはヤメにする。
これまでの「古い当たり前」を見直し、いち早く「外国人に選ばれる環境」を整えた監理団体様や企業様にとっては、日本全国の優秀な人材を味方にできる「チャンス」となるのでは。

そして、その一歩を踏み出すそれは来年の4月ではなく、「今」です。

最後に、外国人の場合、文化的な違いからたとえば日本語で日常会話ができたとしても、職場で感じている不満や違和感を細かく伝えること、表現することは中々難しいと思います。だから例えば離職の兆候が表面化してからではなく、その前に様子などから兆候を察知し相談できる環境をつくれるか、そこに外国人材を定着させる答えがあるように思います。

「新制度に向けた社内規定や運用の見直しを行いたい」
当事務所では、地元の監理団体様や企業様が安心して次へ進めるよう、サポートを行っています。
難しい専門用語でなく、まずは「やさしい日本語」と「丁寧な対話」で。

特定技能(育成就労)外部監査の詳細

法律を変えず、運用面での見直しには批判したいことが多々ありますが…
参考までに。

現政権の外国人の政策点検、という記事が新聞に掲載されていました。
ー主な外国人政策ー
 税・社会保障の納付確認強化
 日本国籍の取得要件厳格化
 在留許可の手数料引き上げ
 永住許可の要件厳格化
 不法残留外国人の摘発厳格化
 マンションなどの不動産の取得規制
(読売新聞2026-8-15掲載)

外国人労働者なしでは回らない現場は多くあるのは皆さん周知の事実です。だから、過剰な排外主義につながる規制を避けつつ、国民生活を守るルールを整備し、さらにより良い方向へと考え続けていかなければならない。


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この記事の監修者 行政書士 髙橋 一夫
2026-8-21

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